こんにちは。グリー行政書士事務所代表の酒井淳です。
当事務所では、事業再構築補助金の申請から交付申請・実績報告と幅広いサポートを行なっています。
この記事を見ているあなたは、「自分にはどの枠での申請が適切だろうとか」考えているのではないでしょうか。
事業再構築補助金には様々な申請類型があり、その時の社会情勢などによって新たな枠が追加されることもあります。
現在公募中の第7回では、新たに緊急対策枠が設けられました。そのため、「緊急対策枠とは何なのか?」と気になっている方も少なくないと思います。
そこで今回は、第7回から追加された緊急対策枠とは何か?という点についてご紹介していきたいと思います。
*この記事は、事業再構築補助金の公募要領などの情報をもとに作成致しました。
緊急対策枠とは?目的や概要について
まずは、そもそも緊急対策枠とは何なのか?どんな目的で設けられたのかという点について解説していきます。
緊急対策枠というのは正式には「原油価格・物価高騰等緊急対策枠」という名称で、その名の通り原油価格や物価の高騰によって予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている企業を支援する目的で設けられました。
経済産業省の発表によると、2020年では150円以下となっていたレギュラーガソリンは2021年から徐々に高騰を始め、2021年10月には160円台に乗り、2022年7月6日時点では小売価格173.6円まで高騰しております。
こうした原油価格の高騰の背景には、新型コロナウィルスによる経済活動の停滞がある程度回復し、その影響で需要が増加したことや、昨今のウクライナとロシアの対立による経済制裁などがあります。
原油価格・物価高騰等緊急対策枠は、こうした現状を踏まえて設けられた枠とされています。
緊急対策枠の対象となる事業者や要件とは?
次は、緊急対策枠の対象となる事業者について解説していきます。
緊急対策枠の対象事業・要件は以下の通りです。
- 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。
- 足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けたことにより、2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高(または付加価値額)が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上(付加価値額の場合は15%以上)減少していること。また、コロナによって影響を受けていること。
- 事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が3000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関と策定していること。(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。
通常枠の場合は2021年に起業した場合は補助対象外となっていましたが、今回の緊急対策枠では「2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して」と記載されているため、2021年に起業した場合でも補助対象となるケースがあるのが特徴です。
また、過去の採択結果を見るに特別枠の採択率は高めとなっているので、要件に該当する場合は積極的に申請していきたいですね。
その他、緊急対策枠で不採択になった場合でも、改めて通常枠で申請することが可能です。そのため、まずは採択率が高めな緊急対策枠で申請し、不採択となったら通常枠で再度申請するというのが良いでしょう。
緊急対策枠の補助金額・補助率はどれくらい?
次は、緊急対策枠の補助金額や補助率について解説していきます。
緊急対策枠の補助金額については以下の通りです。
中小企業・中堅企業ともに
- 従業員数5人以下:100万円~1000万円
- 従業員数6~20人:100 万円~2000万円
- 従業員数21~50人:100 万円~3000万円
- 従業員51人以上:100万円~4000万円
補助率については以下の通りになっています。
中小企業等:3/4(※1)
中堅企業等:2/3(※2)
(※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1000万円を超える部分、従業員数 21人以上の場合 1,500万円を超える部分は2/3。
(※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2。
緊急対策枠の補助対象経費は?
次は、緊急対策枠の補助対象となる経費はどんなものがあるのか?という点についてです。
緊急対策枠の補助対象経費は以下のようなものとなります。
- 建物費
- 機械装置、システム構築費(リース料を含む)
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝、販売促進費
- 研修費
上記のうち、リース料については補助事業実施期間に発生した料金のみ対象となるので注意しましょう。
また、車両の購入費については公道を走らず(自動車登録番号がない)、事業所内や作業所内のみを走るものの場合補助対象にはなりません。ただし、車両に載せる設備などは対象となります。
その他、減価償却資産の耐用年数等に関する省令において「機会及び装置」区分に該当するもの(トラッククレーンやブルドーザー、ロードローラー等)は補助対象となります。
緊急対策枠の対象例は?
次は、実際にどんな事業再構築が緊急対策枠の対象となるのか?中小企業庁から例が提示されているので、紹介していきたいと思います。
1:フライ菓子などの製造販売業者(資源高による影響)
コロナの影響により実店舗への客足が減少していることに加え、原材料となる小麦粉、油などの価格が高騰する一方、商品単価の値下げが難しく、売上・利益率が減少。
既存の加工技術を活かし、新たにドライフルーツの製品を製造する機器を導入。
原油価格・物価高騰の影響を受ける体制から脱却し新たな市場の開拓を図る。
2:明太子を製造・販売する業者(直接的・間接的な輸出入の影響)
コロナの影響により飲食店向けの販売量が減少していることに加え、原料であるタラの卵はロシア産が多くを占めており、製造量を縮小せざるを得ず、売上が減少。
既存の加工技術を活かし、ねり天ぷらや出汁など国内産の水産物を用いた新たな製品を製造する工場を新設。
輸出入の影響を受ける体制から脱却するとともに、既存の販売経路に加え、EC販売も駆使し、感染症等の危機に強い事業として事業の展開を図る。
3:機械部品の商社(海外送金や現地駐在などの諸問題による影響)
コロナの影響により部品の調達に時間を要するなどの影響を受けていることに加え、ロシア企業と取引しているが、金融取引の制約によりロシアからの送金が止まってしまっており、ロシア企業からの代金を回収できない限り、コンテナを引き渡すことができず、売上が立たない厳しい状況。
機械商社のノウハウを活かし、機械部品専用のフルフィルメントサービス(倉庫業)を行うためのシステムを構築。
サービスの提供にあたっては、非対面での営業活動を徹底するとともに、取扱い商材のラインナップを大幅に増やし顧客層を拡大することでリスク分散を進めるなど、感染症等の危機の影響を最小限に抑えられるよう工夫しつつ、ロシア企業との関係に依存しない収入源の確保に取り組む。
上記の3つの例はどれも新型コロナウィルス・ロシアとウクライナ情勢を受けての補助事業への取り組みとなっているのが分かります。
自社はこうしたケースに当てはまるのかどうかをしっかりと確認してから申請をするようにしましょう。
事業再構築補助金第7回の申請スケジュールは?
最後に、第7回の事業再構築補助金の申請スケジュールについてご紹介していきます。
第7回の公募期間は2022年7月1日~9月30日18:00までとなっており、申請受付は8月下旬に開始予定となっています。
申請については電子申請システムのみでの受付となる上、申請するためには原則としてGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。
GビズIDプライムアカウントの取得自体に数週間かかることもありますので、早めに行動を開始するようにしましょう。
まとめ
今回は緊急対策枠についてご紹介させていただきました。
緊急対策枠は要件が特殊ではありますが、通常枠よりも採択率が高い傾向にある特別枠です。そのため、要件に当てはまっている場合は積極的に狙っていきたいですね。
あなたもぜひ、緊急枠での事業再構築補助金の採択を目指してみてください。
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