こんにちは。グリー行政書士事務所の酒井です。日本政策金融公庫の創業融資支援を行なっております。
新しくビジネスを始めるにあたって、公庫から創業融資を受けようと検討している方は多いと思います。
しかし、融資を受ける際に気になるのが返済期間はどれくらいか?という点ですよね。
そこで今回は、公庫の創業融資の返済期間や、その他の注意点などについてご紹介していきたいと思います。
公庫の創業融資の返済期間はいつまで?
まずは公庫の創業融資の返済期間について解説していきます。
公庫の創業融資の返済期間は、基本的に
- 運転資金:最大7年以内(うち据置期間は最大2年以内)
- 設備資金:最大20年以内(うち据置期間は最大2年以内)
となっています。
運転資金というのは事業を行うために必要な商品の仕入れ費用や、水道光熱費、通信費、人件費、家賃など工面するために使う資金を指すものです。
設備資金というのは事業を行なったり拡大するために必要な店舗、工場、機器、施設などを用意するのに使う資金のことを指します。
また、返済期間は運転資金最大7年、設備資金最大20年の間でどれくらいにするかを希望することが可能です。
ただし、返済期間は長ければ長いほどゆとりがあってよいというわけではありません。
例えば、最初の借入額の30%未満しか返済が完了していない場合は追加の融資が難しくなります。返済期間が長い=月々の返済額が少ないということになるので、追加融資可能な目安である30%の返済に至るまで長い期間が必要となります。
融資はビジネスを大きく成長させる上で重要な要素でもあるので、必要な時に追加融資が受けられないというのは大きなデメリットになる可能性があります。返済期間はただ長ければいいというわけではないので、自分の創業計画に合った長さを選びましょう。
据置期間とは何か?
次に、据置期間について解説していきます。
据置期間というのは、簡単に説明すると「金利だけの支払いで済ませ、元金の支払いをしなくてもよい期間」ということになります。
融資というのは言い換えれば借金をすると言うことで、借金には金利が発生します。そのため、本来なら借りた元々の金額である元金と、借金によって発生した金利両方を返済していかなくてはいけません。
しかし、据置期間の間は元金を返済せず、発生した金利のみを支払うという選択を取ることが出来ます。
創業して間もなくの頃というのはビジネスが中々軌道に乗らず、利益を出していくのが難しいタイミングです。そのため、この据置期間の制度を活用してビジネスが軌道に乗るまでの返済を緩和するというのも有効です。
その他、据置期間を利用することで資金の出費を減らし、その分をビジネスに投じてより事業を加速させることも出来ます。有用な制度なので、積極的に活用していきましょう。
ただし注意しなくてはいけないのが、「据置期間も返済期間に含まれる」という点です。
据置期間というのは実質的に返済期間がその分延長されているというわけではありません。そのため「据置期間2年+返済期間7年=実質的に返済期間9年」ということにはならないのです。
据置期間は返済期間に含まれますので、仮に返済期間7年、据置期間2年で2年間を金利のみの支払いで済ませた場合、残りの返済期間は5年となります。その5年の間で残った元金と金利を支払い、完済する必要があるので注意しましょう。
また、据置期間は希望することで最大2年まで設けることが出来ますが、必ずしも希望通りの据置期間が得られるわけではありません。審査の結果によっては希望よりも短くなることもあるので、その点も覚えておきましょう。
創業融資が返済出来なかった時はどうなるのか?
次は、公庫から借りた創業融資を返済出来なかった場合について解説していきます。
1:返済が滞ってしまった場合
月々の返済が滞ってしまっている場合は、公庫から督促の電話や督促状などが来る場合があります。
支払日から数日遅れてしまっても、その後すぐに支払いをしているようなら大きな問題になることはありません。
しかし、頻繁に支払いが遅れてしまったり、滞納している期間が長くなると公庫から頻繁に取り立ての連絡が来るようになるので注意しましょう。
2:完済する前に事業が倒産してしまった場合
公庫の創業融資である新創業融資制度では、原則として保証人や担保を必要としていません。
そのため、仮に法人で公庫から創業融資を借りた場合、その代表者が連帯保証人になることもありません。そのためビジネスが上手く行かずに法人が倒産してしまったとしても、代表者がその後の返済義務を負うということはありません。
ただし、個人事業で公庫から創業融資を借りた場合、借主は個人事業主の方ということになりますので、返済義務が残ります。
返済が難しい場合はどうすればいいのか?
次に、返済が難しい場合の対処法についてご紹介していきます。
1:早めに公庫に相談する
返済が苦しいと判断した場合は、早い段階で公庫に相談しに行くのが得策です。
相談することで返済期限の猶予を見直したり、分割払いの検討など対応策を一緒に考えてもらえる可能性があります。
2:ファクタリングやビジネスローンを利用する
例えば売掛金の入金日まで日があり、公庫への返済に間に合わないなど一時的に資金が足りないという場合は、ファクタリングやビジネスローンを利用してしのぐというのも手段の1つです。
ただし、これらの手段は借入額を増やすことにつながるため、慎重に検討しましょう。
3:債務整理をする
どうしても返済の目処が立たないという時は、裁判所を通して破産申告や民事再生などの手続きを行い、債務整理をするというのも視野に入れましょう。
創業融資のその他の注意点
最後に、公庫から創業融資を受ける際のその他の注意点についてご紹介していきます。
1:新創業融資制度の要件に合っているか?
まず1つ目は、これから始める事業が新創業融資制度が定める要件に合っているか?という点です。
公庫の創業融資である新創業融資制度は、どんなビジネスでも融資してくれるわけではありません。一定の要件をクリアした事業のみが対象となります。
新創業融資制度の要件は
- 雇用の創出を伴う事業を始める方
- 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方など
上記のようになっていますので、しっかりと確認してから申請しましょう。
2:自己資金要件に合っているか?
公庫の新創業融資制度では、先にお伝えした要件の他に自己資金要件というものがあります。
これは創業時において、創業資金総額の1/10以上の自己資金を確認出来るかということになります。
こちらの要件も忘れずにクリアしておきましょう。
まとめ
今回は公庫の創業融資の返済期間や、返済出来なかった場合どうなるか?また、その他の注意点についてご紹介させていただきました。
公庫の創業融資では据置期間を利用することができ、ビジネスを始めてから間もなくの利益が上がりにくい期間をしのぐことが出来るというのがメリットです。
ただし、据置期間は必ずしも希望した通りの期間が得られるわけではありませんし、返済期間の一部として扱われるので、実質的に返済期間が延長されるという考えは間違いです。その点は覚えておきましょう。