こんにちは。グリー行政書士事務所の酒井です。
系統用蓄電池の設置サポートをしています。
「海外に住む個人が、日本に会社を作って、系統用蓄電池(BESS)を設置したい」
このご相談は、ここ1〜2年でかなり増えています。
一方で、実務の現場では次のような“事故”が起きやすいです。
- 土地は決まった、機器も発注した → 役所協議で「ここは開発許可が必要」と判明してストップ
- 系統連系(送配電への申込み)を後回し → 回答が遅れてスケジュールが崩壊
- 外為法を設立後に気付く → 追加対応が発生し、金融機関や関係者説明が面倒になる
系統用蓄電池は、設備としては“置くだけ”に見えますが、
法規制上は「土地・インフラ・防災」にまたがるため、順番を間違えると詰みやすい分野です。
この記事では、海外居住者が関わるケースで、
法人設立から設置までに必要な確認・手続きの流れを、実務ベースで整理します。
1. まず押さえる前提:「海外居住者」×「日本法人」×「BESS」は“複合案件”
この類型は、次の3つが同時に動きます。
- 外為法(外国人の対内投資の整理)
- 土地(都市計画・農地・造成・条例)
- 電力(電気事業法・系統連系・運用体制)
どれか1つでも抜けると、
「工事できない」「連系できない」「事業として成立しない」になり得ます。
2. 全体の流れ(最初に“正しい順番”を提示します)
結論から言うと、基本の流れはこうです。
✅ 推奨フロー(工事ストップを防ぐ順番)
Step0 事業スキーム整理(誰が出資・誰が経営・何をやるか)
Step1 外為法の要否判断(場合により事前届出/事後報告)
Step2 日本法人設立(定款・役員・株主構成)
Step3 候補地の法規制チェック → 役所事前協議(最重要)
Step4 系統連系の申込み(送配電へ)※Step3と並行
Step5 必要許認可の確定(開発許可/農地転用/消防/盛土/景観など)
Step6 施工計画・工事(許可の条件に合わせて設計)
Step7 工事後の確認・運用開始(検査・届出・保守体制)
✅ ここがポイント
- 外為法は「法人設立前」に整理する(後で面倒になりやすい)
- 土地は「候補地が出た瞬間」に役所協議する(遅いと致命傷)
- 系統連系は「最初から並走」(回答に時間がかかる)
3. Step0:最初にやるべき「事業スキーム整理」
外為法も許認可も、結局はここに戻ります。
最低限、次を紙1枚で整理すると後がラクです。
✅ スキーム整理で確認する項目
- 投資家は誰か(海外居住の個人/外国法人/日本側パートナー等)
- 出資比率(議決権割合)
- 代表者は誰か、役員は誰か(海外居住者が就任するか)
- 事業内容(蓄電池の保有だけか、運用もするか)
- 収益構造(アグリゲーター委託/自社運用/共同運用など)
- 土地(賃借か、購入か)
- 施工者(EPC)とO&M(保守)の体制
ここが曖昧だと、役所も送配電も金融機関も前に進みません。
4. Step1:外為法(外為法対応の“考え方”)
4-1. 外為法が出る理由(超ざっくり)
外為法は、簡単に言うと
外国人・外国法人が日本の事業に投資・経営関与する場合に、国が把握する仕組み
です。
海外居住の個人が日本法人を作り、その法人がインフラに関わる事業をする場合、
「対内直接投資」に該当する可能性が高いため、検討対象になります。
4-2. 実務で分岐するポイント(ここが最重要)
外為法の要否は、主に次で決まります。
- 議決権(出資割合):どれだけ持つか
- 経営関与:代表・役員就任、重要意思決定への関与があるか
- 業種の性質:インフラ性が強い領域か(電力関連は注意寄り)
ここで
- 事前届出が必要になるケース
- 事後報告で足りるケース
に分かれます。
4-3. 外為法で“後から困る”典型
- 会社設立が終わった後に「外為法の届出が必要だった」と気付く
- 銀行口座や送配電の説明で「外国投資の整理は?」と聞かれて詰まる
- 出資比率や役員構成を変えないといけなくなる
✅ だからこそ、設立前に外為法の要否を整理が鉄則です。
5. Step2:日本法人設立(海外居住者が絡むときの注意点)
法人設立自体は手続きとしては可能ですが、実務では次が詰まりポイントです。
5-1. 銀行口座(設立より難しいことがある)
海外居住者が代表・出資者だと、金融機関側の審査が厚くなりがちです。
特に電力・エネルギー系は説明資料を求められやすいです。
✅ 口座開設のために準備しておくと良いもの
- 事業概要(1〜2枚でOK)
- 収益スキーム(アグリゲーター委託等)
- 契約関係(EPC見積、土地賃貸借のドラフト等)
- 関係者の身元確認資料(投資家・役員)
6. Step3:土地・都市計画(ここが一番“工事ストップ”を生む)
系統用蓄電池で一番怖いのがここです。
理由は簡単で、土地は自治体判断が強いからです。
6-1. 最初に確認する「3点セット」
候補地が出たら、真っ先にこれを確認します。
- 市街化区域 / 市街化調整区域
- 地目(農地か、雑種地か、宅地か)
- 用途地域(住居系/工業系など)
この3つで、必要手続きの骨格がほぼ決まります。
6-2. よくある分岐
A:市街化調整区域
- 開発許可(都市計画法)が必要になる可能性が高い
- 「工作物」扱いになるか、造成の有無、敷地条件で判断が割れやすい
B:農地
- 農地転用(4条/5条)が必要
- 農振除外が必要な地域もあり、時間がかかることがある
C:造成・盛土が絡む
- 盛土規制法や条例、雨水排水計画などが絡み、設計条件が増える
6-3. 役所の事前協議で必ず聞くべきこと(テンプレ)
事前協議では、次を“質問票”にして持っていくと強いです。
- 本計画は 都市計画法上の開発許可の対象か
- 蓄電池設備は 工作物として規制対象か
- 造成・擁壁・排水計画は どの基準が適用か
- 農地転用の要否(地目・現況・転用区分)
- 景観・条例・住民説明の要否(ガイドライン等)
- 消防との協議が必要か(容量、離隔、消火設備)
✅ コツ
「設置できますか?」ではなく
“必要な手続きの洗い出し”に徹するのが一番前に進みます。
7. Step4:系統連系(送配電への申込み)は“最初から並行”
系統用蓄電池は、結局
系統に繋がる見込みがあるかが事業の生命線です。
そして、送配電の回答は時間がかかります。
だから、土地の協議と同時に走らせるのが鉄則です。
7-1. ざっくり手続きの流れ
- 接続検討の申込み
- 回答(系統増強や条件が付くことがある)
- その後に契約・工事協議…と続く
✅ 注意
連系条件により、設備仕様・工期・費用が大きく変わることがあります。
「土地OKでも、連系条件で成立しない」は普通に起きます。
8. Step5:その他の許認可(案件ごとに“増える”)
ここは自治体・規模・立地で変動しますが、よく出るのは次です。
- 消防(大容量電池、設備配置、離隔、消火設備など)
- 景観(景観計画区域、色彩・フェンス・植栽など)
- 盛土規制法・造成(切土盛土、擁壁、排水)
- 騒音・振動(PCS等の機器)
- 林地開発(山林系の立地)
✅ 重要
EPCが「大丈夫です」と言っていても、
自治体の運用で“追加資料”が出ることがあるので、
行政側の結論を先に取りに行くのが安全です。
9. Step6:工事は「許可条件に合わせて設計してから」
許認可が確定してから施工に入ります。
逆に、ここより前に発注・着工判断を強く進めると、後で苦しくなります。
10. よくある失敗例(読者が一番知りたいところ)
失敗例①:土地が決まってから役所に行った
→ 「調整区域で開発許可が必要」
→ 工期が数か月単位でズレる
→ 施工費・設計費が追加
失敗例②:系統連系を後回し
→ 回答が遅い
→ 連系条件が重い(増強など)
→ 事業性が崩れる
失敗例③:外為法を設立後に気付く
→ 役員構成や出資比率の説明が必要
→ 金融機関・取引先への説明が大変
→ 場合によっては届出対応でバタつく
11. まとめ:この手の案件は「順番」で勝てる
海外居住の個人が関わる系統用蓄電池は、
やることが多いように見えますが、実はコツはシンプルです。
- ✅ 外為法は設立前に整理
- ✅ 土地は候補地の時点で役所協議
- ✅ 系統連系は最初から並行
この3点を守るだけで、
「工事直前でストップ」の確率はぐっと下がります。
(CTA)事前協議・手続き洗い出しのご相談について
当事務所では、系統用蓄電池の計画について
着工前の段階で、役所との事前協議を行い、必要な許認可・届出を洗い出すサポートを行っています。
工事後に止まるリスクを避けたい方は、早めにご相談ください。