こんにちは。グリー行政書士事務所の酒井です。
千葉県柏市で系統用蓄電池設置の事前手続きサポートを行っています。
最近は、北関東だけでなく全国からお問い合わせも増えており需要の高まりを感じます。
はじめに
「系統用蓄電池を設置したいけど、許認可や届出が多すぎて不安」
「どの役所に相談すればいいのか分からない」
「手続きを誤って工事がストップしたらどうしよう…」
こんな気持ちで検索された方も多いのではないでしょうか。
実際、私たち行政書士のところに寄せられるご相談でも、系統用蓄電池の設置に関わる 許認可・届出の見落とし が原因で計画が中断してしまった事例は少なくありません。
この記事では、
- 系統用蓄電池の設置でよくつまずくポイント
- 許認可・届出の具体例と流れ
- 事前に押さえておくべきチェックリスト
を、分かりやすくご説明します。
「これから事業を進めたいけど不安…」という方に、実務で役立つ整理をお届けします。
1. なぜ「許認可・届出」でトラブルが起きるのか
典型的な失敗例
- 都市計画法の見落とし
調整区域だから「設置できない」と思い込み、実は発電事業者設備として適用除外が取れたケース。逆に、許可が必要なのに工事を始めて是正命令になった例も。 - 農地法の読み違え
「白地だから転用不要」と思い込んで着工 → 実際は農地法5条の転用許可が必要でストップ。 - 消防法の過小評価
「コンテナ1基だから大丈夫」と考えたら、容量で危険物施設扱いとなり、事前協議なしで大幅な工事やり直し。 - 文化財調査の失念
包蔵地に該当していたのに気づかず、工事直前で試掘が入り半年遅延。
👉 共通して言えるのは「最初の段階で全体像を整理できていなかった」ことです。
2. 系統用蓄電池に関わる主な許認可・届出
ここでは特に「見落としやすい」ものを重点的に整理します。
(1)都市計画法
- 市街化区域:基本的に問題なく設置可
- 市街化調整区域:原則不可。ただし発電事業者の設備なら適用除外や34条14号協議の対象となる可能性あり。
👉 ポイント:「誰の設備か」=事業者の位置付け が重要。
(2)農地法
- 青地(農振地区域) → 除外申出から。半年以上のスケジュール感。
- 白地(農地) → 4条・5条の農地転用許可が必要。
👉 農業委員会との協議が必須。
(3)消防法
- 蓄電池の種類や容量次第で「危険物施設」扱い。
- 消防署予防課との技術協議は初期段階から進めるべき。
👉 自動消火設備・防爆構造・防液堤 などの安全計画が必要になる。
(4)建築基準法
- コンテナ型が「建築物」とされるかどうか。
- 建築確認申請が必要になるケースがある。
(5)環境関連
- 騒音規制法(ファン音やPCS音)
- 景観条例(色彩・緑地帯の設計)
- 雨水計画(浸透・貯留設備の設置要請)
(6)文化財保護法
- 埋蔵文化財包蔵地なら教育委員会への届出が必要。
- 試掘調査が必要になる場合は数か月の遅延を覚悟。
(7)道路法・河川法
- 工事車両の搬入に道路占用許可や特殊車両通行許可が必要。
- 接続ルートが河川を跨ぐなら河川占用許可が必要。
(8)電気事業法
- 系統連系契約(応談番号→契約)
- 主任技術者の選任
- 使用前自己確認・使用前検査
3. 許認可・届出の流れをどう組み立てるか
典型的なフロー
- 事業計画立案(発電事業者か独立BESSかを整理)
- 設置場所の法令調査(都市計画・農地・環境)
- 系統接続申込み(電力会社)
- 設計案作成(盛土・雨水計画・安全設計)
- 関係法令の事前協議(都市計画課・農業委員会・消防署等)
- 許可申請(開発許可・農地転用許可・危険物施設設置許可など)
- 工事着工
👉 ポイントは「並行できるもの」と「順番が決まっているもの」を整理すること。
4. 実務でよくある「落とし穴」と回避策
- 農振除外の時間を見落とす → 半年〜1年かかるので最初に確認すべき。
- 雨水・盛土計画を軽視 → 面積が1,000㎡を超えると技術審査が入り、追加資料が必要になる。
- 消防との協議不足 → 設計を大きくやり直す羽目になる。
- 補助金スケジュールとのズレ → 許認可が揃わないと交付申請できない。
5. 許認可・届出の事前チェックリスト
- 都市計画課:区域区分・開発許可要否
- 農業委員会:農振除外・農地転用要否
- 消防署:危険物施設該当性・安全対策
- 建築指導課:建築物該否
- 環境課:景観条例・雨水計画・騒音規制
- 文化財課:埋蔵文化財該否
- 道路管理課/河川課:占用許可要否
- 電力会社:系統接続契約
6. 当事務所ができるサポート
- 法令調査レポート(各法令の適否整理)
- 許認可申請書の作成・提出代行
- 事業者と設計者の橋渡し(必要資料整理)
- 補助金活用のための書類整備
👉 事業者の方は「技術」と「金融」に集中し、法務・行政部分は行政書士に任せるのが効率的です。
まとめ
- 系統用蓄電池には複数の法律が関わるため、許認可・届出の全体像を早めに整理することが成功の鍵。
- 特に「都市計画法」「農地法」「消防法」「文化財保護法」は時間がかかるため要注意。
- 事業を止めないためには、事前調査と行政書士のサポートが不可欠。