こんにちは。千葉県柏市のグリー行政書士事務所、代表の酒井です。
農転や開発許可を専門に業務を行っています。
「親の畑に家を建てたい」「中古住宅の売買に合わせて農地を宅地にしたい」——実務ではこうしたご相談が非常に多く、そのたびに必ず聞かれるのが費用はいくら?、期間はどれくらい?、そして5条って何?の3点です。
本記事では、農地転用5条に関わる申請のうち費用・期間に絞り、一般の方向けにわかりやすく、かつ法令根拠はしっかり示しながら解説します。対象エリアは千葉・茨城・埼玉です。
簡潔な自己紹介

千葉県・茨城県・埼玉県を中心に、農地法の許可(4条・5条)、市街化調整区域の家づくり(都市計画法34条)、500㎡超の造成に関わる開発許可(都市計画法29条)、雨水排水や土地改良区協議まで、土地利用の許認可を横断して支援しています。現地調査から申請書作成、役所調整、許可後の地目変更登記の段取りまで、“現場と審査の両目線”で伴走するのが特徴です。
なぜ「費用・期間・4条か5条か」を先に知るべきか
- 費用…測量・分筆、申請、造成、開発許可、上下水引込など、見落としやすい項目が多い。総額の見通しがないと住宅資金計画が崩れます。
- 期間…「いつ着工できるか」は住宅ローンやハウスメーカーの工程に直結。**青地(農用地区域)**が絡むと半年~1年以上かかるケースも。
- 5条…所有権移転や賃貸借を伴うときの農地法第5条。これを誤解すると「許可の種類を間違えた」「そもそも届出で良かった」というミスにつながります。
最初にこれらを押さえることで、余計なやり直しや追加費用を防げます。
「農転」の定義(法令に基づく)
- 農地の定義:農地法2条「耕作の目的に供される土地」
- 転用の定義:農地法4条1項・5条1項「農地を農地以外のものにすること」
つまり、宅地・駐車場・資材置場・太陽光・私道などにする行為は“農地転用”に該当します。
まずは用語の整理:4条と5条、そして届出
- 4条(自己転用):自分の農地を、自分の目的で農地以外にする場合(例:自分名義の畑を宅地化して自宅を建てる)。
- 5条(権利移転・設定+転用):売買・贈与・賃貸借・使用貸借・地上権の設定など、権利の移転や設定を伴って転用する場合。親から子に移して家を建てる/借りて家を建てる等は典型的に5条。
- 市街化区域内のみの特例:5条は区域により許可ではなく届出となる(都市計画法の線引きと連動)。※市街化区域外(市街化調整区域や非線引き区域等)は基本許可。
迷ったら、「誰の土地を、誰のために、どう使うのか。」
名義や契約の動きがあれば「5条」、同一人が自分のためだけなら「4条」が基本です。
農転が必要なケース/不要なケース
必要なケース(例)
- 親の畑(農地)をもらって(または借りて)自宅を建てる → 5条許可(市街化区域なら5条届出)。
- 自分の農地に自宅や駐車場、太陽光、資材置場をつくる → 4条許可。
- 地目上は宅地でも実態が農地(課税上農地など)→ 原則許可が必要。
不要な(または該当しない)ケース(例)
- 家庭菜園(宅地の一部での菜園)→ 転用扱いなし。
- 農業用倉庫の敷地が200㎡未満で、地域要件を満たす特例(自治体で届出扱い)※実務上は事前相談必須。
- 田→畑の変更は農地のままなので、農地法上の転用ではない(ただし盛土や排水の扱いは別途注意)。
千葉・茨城・埼玉で多い事例と地域特性
- 市街化調整区域の分家住宅(34条)×5条許可
- 例:柏・野田(千葉)、つくば・土浦(茨城)、春日部・久喜(埼玉)など。
- 接道要件(原則4m以上)、雨水処理(道路側溝の有無・放流同意)、農振(青地)では除外が前提等が要。
- 青地(農用地区域)の除外→農転
- 農振除外の締切は年3~4回など自治体運用。最短でも半年~1年級の覚悟。
- 500㎡超の造成=開発許可(都計法29条)と併走
- 宅地造成や長大な駐車場・資材置場は開発許可+農転の二段構え。図面・排水計画・公共負担金の検討が必要。
手続きの流れ(調査→申請→審査→許可)
1. 机上調査
- 都市計画(市街化区域/調整区域、用途地域、29条要否)
- 農振(青地か白地か)、地目、課税地目、農地の等級(第1~第3種など)
- 道路・上下水・側溝、土地改良区、農道・用排水路の管理者
2. 事前相談(市町村/農業委員会/都市計画課/土地改良区など)
- 計画の当否、必要な許認可の棚卸し、近隣同意の要否を確認。
3. 測量・境界確定・分筆(必要に応じて)
- 接道や越境の有無をクリアに。調整区域での申請は分筆登記後でないと受理不可の市町村も。
4. 設計・図面作成
- 土地利用計画図(配置図)・平面図・排水計画図・断面図、必要に応じて開発許可用図書。
5. 資金計画・契約関係の整理
- 自己資金の残高証明/ローン事前審査、賃貸借契約・使用貸借契約案(5条)など。
6. 申請
- 農地法4条/5条 許可申請または5条届出
- 併せて開発許可(29条)、必要なら景観法・河川法・道路占用・雨水放流協議等を同時並行。
7. 審査・協議
- 農業委員会の現地確認、都市計画部局との調整、土地改良区の同意、近隣との協議など。
8. 許可・受理
- 許可証(または届出受理通知)交付。地目変更登記の段取り→着工へ。
どれくらいかかる?——「農地転用 期間」を実務目線で
期間は区域区分・青地の有無・分筆の要不要・開発許可の要否で大きく変わります。
| ケース | 目安の期間(千葉・茨城・埼玉の実務感) |
|---|---|
| 市街化区域×5条届出(造成小、図面簡易) | 2~4週間(設計・書類作成を含めると1~1.5か月) |
| 市街化区域外×4条/5条許可(造成小) | 1.5~3か月 |
| 分筆・境界確定が必要 | +1.5~3か月(官民立会の待ち期間が長い自治体も) |
| 開発許可(500㎡超)併用 | 設計・協議含め3~6か月 |
| 青地(農振除外→農転) | 最短6か月~1年以上(除外の締切運用に左右) |
※あくまで目安。個別の地形・排水・道路状況、自治体運用で前後します。
いくらかかる?——「農地転用 費用」の内訳と考え方
費用は申請費=役所の手数料だけではありません。**“許可を得るために必要な準備費用+造成費+関連許可の設計費”**が大きなウエイトを占めます。想定漏れをなくすため、項目別に見ましょう(単価は幅が大きいのでここでは原則“項目”に徹し、現地条件での見積り取得をおすすめします)。
A. 調査・測量・分筆
- 現況測量、境界確定(官民・民民立会)、分筆登記
- 公図・地積測量図・登記事項証明書の取得費
B. 設計・図面
- 土地利用計画図(配置図)、建築計画概要(平面図等)
- 排水計画(雨水・生活排水)、断面図、造成計画
- 必要に応じて開発許可用設計、排水先管理者協議資料、景観法関係
C. 申請関連
- 農地法4条/5条の申請書一式作成・事前協議・現地対応
- (市街化区域内の)5条届出の場合は届出図書
- **都市計画法29条(開発許可)**申請費(図書・協議含む)
- 受益者負担金・公共施設管理者協議に伴う負担(道路・水路占用等)
D. 工事費
- 造成(表土処理・盛土・切土・擁壁・区画工)
- 雨水排水施設(U字溝、浸透ます、調整池が必要な場合も)
- 上下水道引込、電気・ガス引込、砕石敷き、フェンス等
E. 許可後の手続
- 地目変更登記(司法書士)
- 宅地建物取引や融資のための追加測量・各種証明書取得
ポイント:開発許可が絡むと費用は一段増します。
500㎡を超える造成や複数区画の宅地造成は都市計画法29条の対象となり、設計・協議費、公共負担、排水施設整備が大きく上振れする要素です。
書き方のコツ:必要書類を「必須」と「状況に応じて」で仕分け
必須(多くの自治体で共通)
- 申請書(4条/5条、または5条届出)
- 登記事項証明書(申請地・隣接地の所有者確認用も)
- 公図・案内図(2500分の1程度が使いやすい)
- 土地利用計画図(配置図)/建築計画概要(平面図等)
- 現況写真(申請地と周辺状況)
- 資金計画(自己資金の残高写し、ローン事前審査の結果など)
- 権利関係書類(売買契約案、賃貸借・使用貸借契約案、親族関係がわかる書類 など)
状況に応じて求められるもの
- 排水計画図、放流同意書・土地改良区の同意書
- 近隣同意書(日影・排水・工事車両動線への配慮が必要なとき)
- 分筆後の登記記録(調整区域では分筆完了後でないと受理不可の市町村あり)
- 開発許可の図書(29条)、景観法・河川法・道路占用等の関係書類
ここが落とし穴:注意点・失敗事例
- 「届出でいける」と思い込んでいた
- 市街化区域外は届出ではなく許可。5条の届出は市街化区域限定です。
- 権利関係の先行整理を忘れた
- 相続未了、古い仮登記・地役権・抵当権が残ったままだと、融資や登記で詰みます。
- 境界・分筆に時間がかかり、申請が遅れた
- 官民立会の予約が1~2か月待ちの自治体も。測量は最優先で前倒しが鉄則。
- 排水先の管理者(市・区・土地改良区)調整が遅れた
- 「側溝があるから大丈夫」ではなく、放流の可否や負担を必ず先に確認。
- 青地だった
- 農振除外→農転は半年~1年以上のロングゲーム。住宅スケジュールは別建てで。
- 開発許可を見落とした
- 造成面積・用途・道路条件で29条が必要に。**“農転だけ”**で走り出すとやり直しになります。
よくあるQ&A
Q1. 親の農地に家を建てるときは4条?5条?
A. 5条が基本。 親から所有権を移す/借りる/使用貸借など、権利の移転や設定+転用だからです。親名義のまま子が建てる場合も、地上権・使用貸借の設定が伴えば5条。同一人が自分の農地を自分のために使うなら4条。
Q2. 市街化区域ならすべて届出でOK?
A. 5条は届出だが、開発許可(29条)や景観・道路・河川等の他法令は別途必要。造成規模や排水で難易度は変わります。
Q3. 期間を縮めるコツは?
A. 測量・境界確定の先行、排水先の早期協議、資金の事前審査、図面の“審査目線化”。「どこに水を出すか」「近隣への影響は?」への答えを先出しできると審査が早いです。
Q4. 費用を抑えるには?
A. 面積と造成量を抑える、開発許可(29条)に乗らない設計にする、既存インフラ(側溝・上下水)の活用、そして“やり直し”を出さない書類の完成度。結果として測量・造成・設計の総額が下がります。
Q5. 許可後は何をする?
A. 地目変更登記→建築確認→着工。 売買を伴う場合は所有権移転登記、融資実行のための追加書類の用意も忘れずに。
まとめ(本記事で押さえるべきポイント)
- 5条とは:「権利の移転・設定+転用」。親子間でも多くは5条。市街化区域以外は許可が原則。
- 期間のカギは区域(市街化 or 調整)・青地の有無・分筆・開発許可の要否。
- 費用は“申請費だけ”ではない。 測量・分筆・設計・排水・造成・開発許可・登記まで総合コストで考える。
- 千葉・茨城・埼玉では、調整区域×分家住宅×5条や青地除外が多く、早い段階の事前相談が成否を分けます。
まとめ
まずは市役所・農業委員会・都市計画課に相談してみましょう。
「自分での申請が難しい」「図面や排水まで手が回らない」という場合は、専門家(行政書士)へ相談することで、回り道ややり直し、無駄な費用の発生を抑えられます。