こんにちは。グリー行政書士事務所 代表 酒井です。
今日は、市街化調整区域での系統用蓄電池の設置の流れについて解説します。
はじめに
再生可能エネルギー事業で注目される「系統用蓄電池(BESS)」。
発電所や送配電網の安定化のために導入するケースが増えています。
しかし実際に設置を進めようとすると、必ず直面するのが 法律や手続きのハードル です。
特に「調整区域」に設置する場合は、都市計画法の開発許可が必要か?不要か? という問題が出てきます。
この記事では、系統用蓄電池設置の流れを8つのステップに分けて、実務で押さえるべきポイントを徹底的に整理します。
1. 事業計画の立案
まずは「なぜ蓄電池を置くのか」を明確にします。
- 系統安定化(周波数調整・出力平準化)
- 再エネ発電所とのセット利用
- 電力市場(容量市場・需給調整市場)への参入
- 自家消費やピークシフト
👉 この目的次第で、**電気事業法上の扱い(発電事業か小売事業か)**が変わり、後の「開発許可の要否」に直結します。
2. 設置場所の選定
次に候補地を決めます。
- 市街化区域 → 設置しやすい
- 市街化調整区域 → 原則として設置できない
👉 調整区域に設置する場合は、開発許可が必要かどうか、また「適用除外」に当たるかどうかを必ず確認する必要があります。
3. 系統接続の確認(電力会社との協議)
系統用蓄電池は、電力会社の系統とつながることで役割を果たします。
- 東京電力などに「接続申込み」
- 系統容量や技術条件の審査
- 接続可能であれば「連系契約」へ
👉 系統接続が認められることで「発電事業者としての設備」と位置付けられ、開発許可の適用除外になる可能性が高まります。
4. 法令チェック(関係法令の整理)
ここが最重要ステップです。
系統用蓄電池の設置には、想像以上に多くの法律が関わります。
都市計画法
- 調整区域 → 原則は開発許可が必要
- 危険物を含む場合 → 第一種特定工作物に該当
- 発電事業者の設備 → 適用除外(許可不要)になる場合あり
- 条例運用(34条14号)で審査 → 自治体ごとに基準が違う
農地法
- 農地を使う場合は**農地転用許可(4条・5条)**が必要
- 青地・農振地区域は難易度が高く、除外手続きから必要
建築基準法
- コンテナ型は建築物扱いとなることがある
- 建ぺい率・容積率・高さ制限の確認必須
消防法
- 蓄電池が危険物規制対象になる場合あり
- 数量基準を超える場合は危険物施設設置許可が必要
- 消火設備、防液堤、防爆対策などが求められる
環境関連法令・条例
- 騒音・振動規制法:ファンや機器音の対応
- 景観条例:周辺景観に配慮した設置計画
- 環境アセスメント:大規模案件では必須になることも
その他の法令
- 道路法(搬入路・工事車両の占用許可)
- 河川法(土地が河川区域にかかる場合)
- 盛土規制法(一定規模以上の造成がある場合)
- 電気事業法(電気工作物としての技術基準)
- 再エネ特措法(FIT/FIP利用の場合は認定変更)
👉 この「法令チェック」を疎かにすると、工事がストップするリスクがあります。
5. 設計・施工計画の作成
配置・構造設計
- コンテナ配置(住宅や道路から離隔距離を確保)
- 地盤調査・耐震設計
- 避雷・接地設備の設置
消防・安全対策
- 防火区画・防爆構造の採用
- 自動消火設備(ガス消火など)の設置
- 漏液対策(二次防止設備、防液堤)
騒音・振動対策
- 防音壁の設置
- 低騒音ファンの採用
- 稼働時間の調整(夜間停止など)
環境・景観対策
- 緑地帯・植栽による遮蔽
- コンテナ色彩の工夫
- 廃棄時のリサイクル計画
施工計画
- 重機搬入ルートの確保
- 工事車両の通行規制対応
- 工程表・安全管理計画の作成
近隣配慮
- 事前説明会の開催
- 苦情窓口の設置
- 工事時間帯の制限
👉 設計段階から「安全・環境・近隣配慮」を織り込むことがトラブル防止につながります。
6. 許可申請・届出
都市計画法
- 開発許可申請(必要な場合)
- 34条14号許可(条例基準による運用)
農地法
- 農地転用許可申請(農業委員会・県知事)
- 農振除外申出(農振地区域の場合)
建築基準法
- 建築確認申請(建築物扱いとなる場合)
消防法
- 危険物施設設置許可申請
- 防火対象物使用開始届
環境関連
- 騒音・振動規制法届出
- 景観条例届出
- 環境影響評価手続き
その他
- 道路占用許可申請
- 河川占用許可申請
- 再エネ特措法に基づく事業計画変更認定
- 電気主任技術者の選任届
- 使用前自己確認・使用前検査(電気工作物)
👉 許可や届出の順序を誤ると、工事開始が遅れます。必ずスケジュール管理が必要です。
7. 工事・設置
各種許可・届出が整ったら工事に着手します。
- 基礎工事・造成
- コンテナ搬入・据付
- 電気工事・配線
- 安全対策(防火・防爆設備の設置)
👉 工期管理と安全管理を徹底することが求められます。
8. 系統連系・運用開始
最後に、電力会社と接続試験を行い、問題なければ運用開始です。
- 系統連系試験
- 運用開始届
- 市場取引への参入(容量市場・需給調整市場など)
まとめ
系統用蓄電池設置の流れは、以下の8ステップに整理できます。
- 事業計画の立案
- 設置場所の選定
- 系統接続の確認
- 法令チェック(都市計画法・農地法・消防法など)
- 設計・施工計画の作成
- 許可申請・届出
- 工事・設置
- 系統連系・運用開始
特に調整区域では、都市計画法の開発許可が必要か、適用除外で不要になるかが最大のポイントです。
グリー行政書士事務所として
当事務所では、
- 農地転用の可否
- 開発許可の要否
- 電気事業法の適用除外に当たるかどうか
- 自治体ごとの条例や事前協議の対応
これらをワンストップで整理し、発電事業者さまの蓄電池設置をサポートしています。