こんにちは。千葉県柏市のグリー行政書士事務所、代表の酒井です。
当事務所では「農地転用」や「開発許可」といった土地活用に関する手続きを専門に扱っています。
「親戚に土地を貸して家を建てたいんです」
「でもお金はもらわないし、使用貸借だから手続きいらないですよね?」
実は、このご相談、とても多いんです。
そして結論からいうと――
👉 無償で貸す「使用貸借」でも、相手が農地を宅地などに転用するなら、農地法5条の許可が必要です。
今日は、この「使用貸借×農転5条」という分かりにくいポイントを、実際の相談事例を交えながら解説していきます。
使用貸借とは?
民法でいう「使用貸借」は、簡単にいうと――
「無償で物を貸して、借主が使ったら返す契約」 のことです。
例えば、
- 親が子に土地を貸す
- 親戚に無償で農地を使わせる
こうしたケースは使用貸借にあたります。
使用貸借でも農転5条が必要な理由
農地法第5条は、こう定めています。
農地を、所有権移転や貸借などにより他人に渡して、その人が農地以外に転用する場合は、知事の許可が必要。
ここでポイントは 「貸借など」 に「使用貸借」も含まれるという点です。
つまり――
- 有償の賃貸借だけでなく
- 無償の使用貸借も対象
「タダで貸すだけだから大丈夫」は通用しないのです。
実際によくある相談事例
事例1:親から子へ、マイホーム建築のために貸す
「親の農地に家を建てたいんです。名義はそのまま親で、私は無償で借りる形です。許可いりますか?」
→ この場合、使用貸借による農地転用 にあたります。
「親子間だし」「お金をもらっていないし」と思われがちですが、宅地利用する時点で農地法5条許可が必要です。
事例2:兄弟に無償で貸して駐車場に
「農地をそのまま持っていても使い道がないから、兄に無料で貸して駐車場にしてもらうつもりなんです。届け出だけでいいですか?」
→ 駐車場への転用は典型的な非農業利用。
無償であっても貸借関係が発生しているため、5条の許可が必要です。
事例3:親戚に畑として貸す
「農業をやめた親戚に貸して、また畑として使ってもらう予定です。」
→ この場合は 農地としての利用 なので、農地法5条ではなく 3条の許可 が必要。
つまり「農業利用なら3条、宅地や駐車場利用なら5条」と覚えると分かりやすいです。
許可を取らないとどうなる?
- 売買契約や貸借契約が 無効扱い に
- 相手が家を建てても、登記や融資で大きな不都合
- 最悪の場合、原状回復を命じられることも
「親子間だから」「お金を取っていないから」という理由で許可を省略すると、大きなリスクにつながります。
手続きの流れ(使用貸借でも基本は同じ)
- 事前相談(市町村農業委員会へ)
- 申請書・添付書類を準備(登記簿、公図、案内図、資金計画など)
- 農業委員会へ提出 → 現地調査
- 都道府県で審査 → 許可証交付
- 地目変更登記(宅地利用にする場合)
費用の目安
- 登記事項証明書・公図取得:数千円
- 測量が必要なら:数十万円
- 行政書士報酬:20〜50万円前後
- 都市計画法の開発許可が必要な場合:さらに追加費用
「親子間だから安くなる?」と思われがちですが、手続き上は通常の5条許可と同じ扱いになります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 子どもに貸すだけでも農転5条が必要?
→ はい。相手が宅地などに使うなら必須です。
Q2. 登記名義を変えないなら不要?
→ 登記を変えなくても「貸す」という行為自体が対象になるので必要です。
Q3. 使用貸借契約書は必要ですか?
→ 許可申請の際、契約関係を示す資料として求められることがあります。書面で残しておくのがおすすめです。
まとめ
- 使用貸借=無償で貸す契約
- でも相手が農地を宅地化するなら農地法5条の許可が必要
- 親子間・親戚間でも例外はない
- 手続きを怠ると契約が無効になるリスク大
「タダで貸すだけだから大丈夫」と思っている方こそ注意が必要です。
まずは市町村の農業委員会に相談し、自分で難しいと感じたら専門の行政書士に依頼するのがおすすめです。