こんにちは。千葉県柏市のグリー行政書士事務所、代表の酒井です。
当事務所では「農地転用」や「開発許可」といった土地の活用に関する手続きを専門に扱っています。
「親から農地を相続したんですが、売却したい」
「畑を貸して、その上にアパートを建てたい」
「農地を知人に譲って、駐車場にしてもらいたい」
千葉・茨城・埼玉では、こうしたご相談、本当に多いんです。
ただ、調べてみると必ず出てくるのが 「農地転用5条」 という言葉。
- 「届出で済むのか、許可が必要なのか?」
- 「必要書類って何?」
- 「費用はどれくらい?」
- 「4条と何が違うの?」
こうした疑問を持って検索されている方が非常に多い印象です。
今日はそんな「農地転用5条」について、法律の根拠を踏まえつつ、できるだけわかりやすく解説していきます。
農地法5条とは?
まず押さえておきたいのは、農地法第5条 の規定です。
条文をかみ砕いて言うと――
「農地を、売買や貸借などによって他人に渡し、その人が宅地や駐車場など農地以外の用途に使うときは、知事の許可が必要」
という内容です(農地法第5条第1項)。
逆に言うと、自分の農地を自分で転用する場合は 農地法4条 の手続きになります。
ここでよく「4条と5条の違いって何ですか?」と聞かれるのですが、整理するとこうです。
本記事の参考条文:農地法(e-Gov 法令検索)
農地法4条と5条の違い
条文 | 主体 | 典型例 | 手続き |
---|---|---|---|
4条 | 自分で自分の農地を転用 | 親の農地に自宅を建てる | 許可 or 届出 |
5条 | 他人に農地を渡して転用 | 農地を売って宅地化、貸して駐車場にする | 許可 or 届出 |
「自分で使う」か「他人に渡して使わせる」か、ここが分かれ道です。
農転5条が必要なケース/不要なケース
必要なケース
- 農地を売却し、買主が住宅を建てる
- 農地を貸して、借主が駐車場にする
- 使用貸借(無償で貸す)でも、相手が宅地化すれば5条に該当
不要なケース
- 農地を農業目的で貸す(農地法3条の許可が必要になりますが、5条ではありません)
- 農地を農業用倉庫のために使う(200㎡未満なら届出で済むことがあります)
手続きの流れ(農転5条)
実際の流れはこんな感じです。
1. 事前相談
まずは市町村の農業委員会に相談します。
「売却予定」「貸借予定」の内容と、土地の場所を伝え、転用が可能かどうかを確認します。
2. 書類準備
- 登記事項証明書
- 公図
- 案内図(都市計画図など)
- 資金計画を示す資料(通帳コピー・融資内定通知など)
- 建築計画概要書
など、自治体によって追加書類が必要なこともあります。
3. 申請書作成
農地法5条の許可申請書を作成します。都道府県や市町村の様式を使い、必要事項を記載します。
4. 農業委員会へ提出
申請書一式を農業委員会に提出。
→ 農業委員が現地確認を行います。
5. 都道府県での審査
農業委員会での審議を経て、都道府県へ。ここで再度書類・現地調査が行われます。
6. 許可証交付
問題がなければ、知事(または権限を委譲された市町村長)から許可証が交付されます。
許可証が出て初めて、売買契約や登記変更に進めます。
必要書類の詳細
典型的に必要とされるのは次の書類です。
- 登記事項証明書(法務局で取得、3か月以内)
- 公図(コピーでもよい場合あり)
- 案内図・位置図(2500分の1都市計画図が望ましい)
- 資金計画書(通帳コピーや融資審査書類)
- 建築計画概要書(建物の用途・規模を明記)
- 隣接地の所有者情報(登記事項証明書で確認)
- 排水計画書(周辺農地への影響を示す)
費用の目安
よく聞かれるのが「費用はどれくらい?」という点。
- 登記事項証明書・公図などの取得費用:数千円
- 測量費用:数十万円(境界が不明な場合)
- 行政書士報酬:20〜50万円前後(案件内容による)
- 都市計画法の開発許可が必要な場合:さらに追加費用
「思ったより高い…」と感じられるかもしれませんが、許可を取らずに売買してしまうと契約自体が無効になってしまうため、適切な手続きは欠かせません。
地目変更との関係
農転許可が下りた後、忘れてはいけないのが 地目変更登記 です。
農地から宅地へ地目を変えることで、登記上も宅地として扱われます。
もし地目変更をしていないと、金融機関が担保に取ってくれないなど不都合が生じます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 使用貸借でも農転5条は必要ですか?
→ はい。無償でも相手が宅地化するなら5条の許可が必要です。
Q2. 許可と届出はどう違うのですか?
→ 市街化区域内なら届出で済むことがあります。調整区域や青地は許可が必要です。
Q3. 4条と5条、どちらを選べばいいのですか?
→ 自分で使うなら4条、他人に渡すなら5条。ケースによって異なります。
まとめ
- 農地法5条 は、他人に農地を渡して転用する場合に必要な手続き。
- ケースによって「届出」と「許可」があり、区域や用途によって判断される。
- 必要書類は登記事項証明書・公図・資金計画書など多数。
- 費用は数十万円かかることもあり、都市計画法の開発許可が絡む場合はさらに増える。
- 許可後は必ず地目変更登記も行う。
「売却したい」「貸したい」と思ったとき、まずは市町村の農業委員会に相談してみましょう。
もし書類の準備や調整が難しいと感じたら、専門の行政書士に依頼すると安心です。