こんにちは。グリー行政書士事務所 代表の酒井です。
系統用蓄電池設置に向けた行政への手続きをサポートしています。
はじめに
「系統用蓄電池を導入しようと思ったのに、手続きでつまずいてしまった…」
「契約も工事も進んでいたのに、最後に許可が下りずストップになった…」
こうした声は、再生可能エネルギーや電力事業を始める事業者の間で少なくありません。
特に、系統用蓄電池(BESS)は複数の法律や届出が重なり合う“法規制の迷路”ともいえる分野です。
本記事では、実際に起こりがちな「失敗パターン」を整理しながら、なぜ失敗するのか、どう回避すべきかを行政書士の視点で丁寧に解説します。
1. よくある「失敗シナリオ」
1-1. 都市計画法での失敗
- 調整区域なのに「許可不要」と思い込む
→ 実際には開発許可が必要で、是正命令が出て工事中断。 - 34条14号の適用を誤解
→ 「発電事業者設備だから適用される」と考えても、自治体運用で認められず申請やり直しに。
👉 都市計画法関連は「適用除外」となるかどうかの判断を早めに確認することが大切です。
1-2. 農地法での失敗
- 農振除外に時間がかかるのを見落とす
→ 青地の農地を利用する場合、除外手続きだけで半年以上。スケジュールが大幅に遅延。 - 非農地証明で済むと思ったら却下
→ 実際には農地転用許可が必要だったケース。
👉 農地は「青地/白地」「農振地区か否か」を必ず事前に確認することが鉄則です。
1-3. 消防法での失敗
- 危険物該当を見落とす
→ 電池容量が基準を超えており「危険物施設」に該当。設計変更や許可取得で数か月遅れ。 - 事前協議をしていなかった
→ 消防署と協議していれば済んだはずの設計修正が、工事直前で発覚。
👉 消防は「容量・化学種類・設計仕様」で早期に協議することが重要です。
1-4. 環境・住民対応での失敗
- 雨水排水計画の提出忘れ
→ 開発指導要綱で必須だったのに提出せず差し戻し。 - 騒音・景観の軽視
→ 住民説明会で強い反対に遭い、役所が許可を出し渋るケース。
👉 「法令」だけでなく「要綱・条例・住民感情」も見落とさないことが大切です。
1-5. 電気事業法での失敗
- 応談番号を取得しないまま計画を進める
→ 系統接続できず、そもそも事業が成り立たない。 - 主任技術者の選任を忘れる
→ 使用前検査の段階で止まってしまう。
👉 「系統接続協議」と「主任技術者の確保」は、必ず初期に押さえるべきポイントです。
2. 失敗が起こる原因
失敗の根本原因は大きく3つに分けられます。
- 法令の縦割り
- 都市計画法、農地法、消防法、建築基準法、環境条例…それぞれ別の部署が所管。
- スケジュール見込みの甘さ
- 農振除外:半年以上
- 文化財調査:数か月
- 消防・建築協議:設計段階で時間を要する
- 「自分たちだけでできる」と過信
- EPCや設計者任せにすると、法的観点が抜け落ちる。
3. 失敗を防ぐチェックリスト
以下は初期段階で必ず確認すべき項目です。
- 都市計画区域/調整区域の確認(都市計画課)
- 農地かどうか、農振地区かどうか(農業委員会)
- 消防署との危険物判定協議
- 環境課による騒音・雨水規制確認
- 文化財課での包蔵地確認
- 電力会社への系統接続申込み、応談番号取得
- 主任技術者の選任見通し
4. まとめ:失敗を避けるために
系統用蓄電池事業での失敗は、「法律や届出を軽視したこと」が原因であることがほとんどです。
一度でも工事が止まると、EPC・金融機関・地元住民との信頼関係まで揺らいでしまいます。
当事務所は、
- 法律ごとの要件整理
- 役所との事前協議
- 書類作成・提出代行
を通じて、事業をスムーズに進める「調整役」として伴走します。
👉 系統用蓄電池の許認可・届出で不安がある方は、早い段階からご相談いただくことが、最大のリスク回避策です。