こんにちは。千葉県柏市のグリー行政書士事務所、代表の酒井です。
当事務所では「農地転用」や「開発許可」といった、土地の活用に関わる手続きを専門に行っています。
近年、「ソーラーシェアリング」という言葉を耳にする方が増えてきました。農地に太陽光パネルを設置しながら、下では農業を続けるという新しい土地利用の方法です。
「耕作を続けながら太陽光発電もできるなら一石二鳥では?」
「でも、農地法の手続きが必要なの?」
「千葉や茨城でソーラーシェアリングを始めたいけど、許可の流れはどうなる?」
こうした疑問を多くの方からいただきます。そこで本記事では、ソーラーシェアリングの仕組み、農地転用との関係、手続きの流れ、そして注意点をわかりやすく整理しました。
ソーラーシェアリングとは?
ソーラーシェアリングは、農地の上部に支柱を立て、太陽光パネルを設置して発電を行い、その下で農作物を栽培する方法です。
通常の太陽光発電は農地をつぶして設置しますが、ソーラーシェアリングは「農業をやめずに、再生可能エネルギーも得られる」という点が特徴です。
日本では2013年に農林水産省がガイドラインを出し、農業と発電を両立させる形が広がってきました。
農地法から見たソーラーシェアリング
ソーラーシェアリングを行う場合、「農地に発電設備を設置する」ため、農地法上は一時転用許可が必要です。
- 農地法第4条第1項:自分の農地を農地以外に転用する場合
- 農地法第5条第1項:農地を他人に譲渡して転用する場合
いずれにしても、「農地を農地以外の用途にする行為」なので、転用許可が必要になります。
ただし、ソーラーシェアリングは耕作を続けることが前提です。そのため、農地法上では「一時転用(3年更新)」として扱われるのが一般的です。
ソーラーシェアリングが必要になるケース
- 農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置する
- パネルの下で農業を継続する計画がある
- 発電した電力を売電する、または自家消費する
このような場合、農地法許可+電気事業の手続きが必要になります。
ソーラーシェアリングが不要なケース
逆に、次のような場合はソーラーシェアリングには該当せず、通常の農地転用や他法令手続きが必要です。
- 農業をやめて全面的に太陽光発電を行う場合 → 通常の農地転用許可
- 農地ではなく、宅地や雑種地に太陽光を設置する場合 → 農地転用不要
千葉・茨城・埼玉でのソーラーシェアリング事例
千葉県
柏市・野田市・成田市などで、農家が畑にソーラーパネルを設置し、下で葉物野菜やイチゴを栽培する事例があります。
茨城県
筑西市やつくば市では、研究機関と連携してソーラーシェアリングの実証実験が進んでいます。
埼玉県
加須市・久喜市などで稲作とソーラーシェアリングを組み合わせる動きが見られます。
ソーラーシェアリング手続きの流れ
- 農地の確認
- 青地(農振地域内農地)か白地かを確認
- 青地ならまず「農振除外」の手続きが必要
- 事前相談
- 市町村の農業委員会に相談
- 発電設備の規模、農業継続計画を説明
- 申請書作成
- 農地転用許可申請書(農地法第4条または第5条)
- 添付書類(位置図・土地利用計画図・営農計画など)
- 農業委員会審査・現地調査
- 農業継続が可能か、日照や排水への影響はないかをチェック
- 都道府県の許可
- 許可が下りれば、3年ごとの更新手続きが必要
注意点・失敗事例
- 農業をしていないのに設置したケース → 更新拒否や撤去命令
- 近隣農地の日照を妨げたケース → 苦情が出て調整が必要に
- 営農計画が形だけだったケース → 実態調査で不許可に
Q&A
Q1. ソーラーシェアリングで住宅ローンや農業融資は使えますか?
A. 農地転用許可が前提になります。金融機関は「許可証」を融資審査で必ず確認します。
Q2. 許可までどのくらい時間がかかりますか?
A. 農振除外から始める場合は半年〜1年、それ以外は3〜6か月が目安です。
Q3. 費用はどれくらい?
A. 行政書士報酬・測量費・書類取得費用などで数十万円程度。都市計画法の開発許可が絡む場合はさらに費用がかかります。
まとめ
- ソーラーシェアリングは「農業をやめずに再生可能エネルギーを生み出す仕組み」
- 農地法上は一時転用許可(3年ごと更新)が必要
- 千葉・茨城・埼玉でも導入が進んでいる
- 事前相談・農振除外・農地転用申請・更新がポイント
まずはお住まいの市町村の農業委員会に相談してみましょう。自分で申請が難しい場合は、専門家である行政書士への相談をおすすめします。