こんにちは。グリー行政書士事務所の酒井です。
農地転用や開発許可を専門に許認可の取得代行を行っています。
はじめに
「系統用蓄電池を設置したいが、どんな許可や法律が関わるのか分からない」
「事業者としてどんな制度を押さえる必要があるのか整理したい」
こうした疑問を持って検索している方は、再エネ事業や電力ビジネスの立ち上げに関わる方が多いはずです。
実際、系統用蓄電池(BESS)は 電気事業法・都市計画法・農地法・消防法など複数の法律が複雑に絡み合うため、事前に全体像を理解していないと計画がストップするリスク があります。
この記事では、行政書士の視点から「許認可・事業者・制度・法律」を体系的に整理し、初めての方でも分かるように解説します。
1. 系統用蓄電池と事業者の位置付け
事業者とは誰を指す?
- 発電事業者
電気事業法に基づく「発電事業届」を提出した主体。系統連系が認められれば「発電事業者設備」として都市計画法の開発許可が不要になる可能性があります。 - アグリゲーター
需給調整市場・容量市場に参加し、複数のBESSを束ねて市場に出す主体。単独の事業者が市場に直接参加するのは難しく、アグリ契約が一般的です。 - 独立BESS事業者
発電はせず、系統安定化サービスのみを提供。都市計画法上の扱いが曖昧になりやすく、許認可整理が重要です。
👉 ポイント
許認可の可否や手続きのルートは「どの立場で事業を行うか」によって大きく変わります。
例えば「発電事業者設備」と認められれば、都市計画法の開発許可が不要になるケースもあります。
2. 許認可の基本的な流れ
都市計画法
- 市街化区域 → 比較的設置しやすい。
- 市街化調整区域 → 原則禁止。開発許可か34条14号(公益上必要な施設)に当たるか確認が必要。
- 非線引き区域 → 3,000㎡以上の造成は開発許可対象。
👉 調整区域では「電気事業者設備とみなされるかどうか」が最大の分岐点です。
農地法
- 農地転用許可(4条・5条) が必要。
- 農用地区域(農振)の場合は「農振除外」からスタート。半年~1年以上かかるケースもあります。
- 甲種農地・集団農地は難易度が高い。
👉 農振除外 → 農地転用 → 開発許可、の順で進めるのが基本ルートです。
消防法
- 蓄電池の種類や容量によっては 危険物施設 として扱われます。
- 消防署との事前協議で「防火区画」「防爆仕様」「防液堤」「自動消火設備」の導入を求められることも。
👉 消防法協議を怠ると「運用直前で使用停止」のリスクがあります。
建築基準法
- コンテナ型BESSが「建築物」とみなされる場合、建築確認申請が必要。
- 建ぺい率・容積率・高さ制限がかかるケースもあります。
環境関連法令・条例
- 騒音規制法 → ファン音や夜間稼働に注意。
- 景観条例 → コンテナの外観や植栽計画が求められることも。
- 雨水対策(開発指導要綱) → 1,000㎡以上なら浸透トレンチや調整池の設計が必須。
👉 こうした「条例レベルの縛り」は自治体ごとに違うため、必ず事前協議が必要です。
3. 制度面で押さえること
容量市場/需給調整市場
- 系統用蓄電池の主要な収益源。
- 直接参加は難しく、多くの場合はアグリゲーター契約を結びます。
補助金制度(経産省・自治体)
- 設備投資を大幅に軽減できる制度。
- 国(経産省)の公募に加え、自治体独自の補助金(例:東京都)がある。
- 要件に「許認可取得済み」が含まれるケースが多いので、スケジュール調整が必須。
再エネ特措法(FIT/FIP)
- 太陽光や風力と併設する場合は「事業計画認定の変更」が必要。
- 単独BESSのみの場合は不要なケースもあります。
👉 制度は年度ごとに変わるため、令和7年度の最新情報を確認することが欠かせません。
4. 法律リスクと実務上の注意点
都市計画法違反リスク
調整区域で「開発許可不要」と誤解して工事を始め、是正命令を受けて中断 → 数千万円単位の損害になるケースも。
消防法違反リスク
消防協議を怠り、運用直前に使用停止を受ける。特に消火設備や危険物施設基準の見落としが多い。
契約上のリスク
- EPC契約:地盤改良や雨水計画が盛り込まれていないと追加工事でコスト増。
- 土地契約:撤去義務や地役権が曖昧だと、将来の撤去費用でトラブル。
👉 許認可と並行して「契約・保険・撤去計画」まで押さえておくことが成功のカギです。
まとめ
- 事業者の位置付け(発電事業者/アグリゲーター)が最初の分岐点。
- 都市計画法・農地法・消防法などの許認可は必ず事前に整理。
- 制度(市場・補助金)は毎年変わるので、最新情報をチェック。
- 法律リスク(工事ストップ・使用停止・撤去費用)を未然に潰すことが大事。
行政書士によるサポート
当事務所(グリー行政書士事務所)では、
- 設置予定地の法令調査(都市計画・農地・環境)
- 各種許認可申請(開発許可・農地転用・消防協議)
- 補助金・市場制度に向けた書類整理
をワンストップでサポートしています。
「系統用蓄電池事業を途中で止めない」
そのために、最初の段階からご相談ください。